聖ヨゼフの取り次ぎの祈りのうちに歩む

末吉町教会「街の灯」2021年5月号巻頭言

末吉町教会主任司祭 ヨゼフ 濱田 壮久神父

 5月1日は労働者聖ヨゼフの任意の記念日でした。5月1日がこの記念日として制定されたのは、尊者ピオ12世教皇様の時代、1955年でした。これは、5月が聖母マリアに捧げられた月であることとも関係しています。聖母マリアの浄配である聖ヨゼフの記念日が5月の一番初めの日に置かれていることはとても大きな意味があります。聖母マリアの神の母としての命を育む使命は、聖ヨゼフの支えによって成し遂げられたからです。

なお、5月1日はヨーロッパでは夏の訪れを祝う伝統がローマ帝国の時代から受け継がれてきており、今でも各国では5月1日の前後に大きなお祭りが行われています。19世紀末には、人間らしい労働のあり方を訴える日として5月1日に国際的なアピールが行われはじめたこともあり、大工として聖家族の生活を支えた聖ヨゼフにちなんで尊者ピオ12世教皇様が、労働に従事しているすべてのカトリック信者の守護聖人として「労働者聖ヨゼフ」の祝日を1955年に制定されたことが始まりです。

さて、フランシスコ教皇様は2020年12月8日から2021年12月8日までを、1870年12月8日の福者ピオ9世教皇様による聖ヨゼフを「普遍教会の保護者」として宣言した『クエマドモドゥム・デウス』の公布150周年を記念して使徒的書簡『父の心で』をもって「聖ヨゼフ年」として宣言なさいました。日本カトリック司教団として、2021年2月16日の定例司教総会での認可によって、1909年に聖ピオ10世教皇様によって認可された「聖ヨゼフの連願」の日本語訳を正式に発表しました。

【聖ヨゼフの連願】

主よ、いつくしみを。 ▲主よ、いつくしみをわたしたちに。

キリスト、いつくしみを。 ▲キリスト、いつくしみをわたしたちに。

主よ、いつくしみを。 ▲主よ、いつくしみをわたしたちに。

キリスト、わたしたちの祈りを聞いてください。 ▲キリスト、わたしたちの祈りを聞いてください。

キリスト、わたしたちの祈りを 聞き入れてください。 ▲キリスト、わたしたちの祈りを 聞き入れてください。

神である天の御父 ▲いつくしみをわたしたちに。

神であり世のあがない主である御子 ▲いつくしみをわたしたちに。

神である聖霊 ▲いつくしみをわたしたちに。

唯一の神である聖三位 ▲いつくしみをわたしたちに。

聖マリア ▲わたしたちのために祈ってください。

聖ミカエル ▲わたしたちのために祈ってください。

聖ヨセフ ▲わたしたちのために祈ってください。

誉れ高いダビデの子孫 ▲わたしたちのために祈ってください。

太祖の光 ▲わたしたちのために祈ってください。

神の母マリアの夫 ▲わたしたちのために祈ってください。

おとめマリアの純潔な守護者 ▲わたしたちのために祈ってください。

神の御子の養育者 ▲わたしたちのために祈ってください。

キリストの注意深い擁護者 ▲わたしたちのために祈ってください。

聖家族の長 ▲わたしたちのために祈ってください。

まことに正しいヨセフ ▲わたしたちのために祈ってください。

まことに貞潔なヨセフ ▲わたしたちのために祈ってください。

まことに賢明なヨセフ ▲わたしたちのために祈ってください。

まことに勇敢なヨセフ ▲わたしたちのために祈ってください。

まことに従順なヨセフ ▲わたしたちのために祈ってください。

まことに誠実なヨセフ ▲わたしたちのために祈ってください。

忍耐のかがみ ▲わたしたちのために祈ってください。

貧しさを愛するかた ▲わたしたちのために祈ってください。

職人の模範 ▲わたしたちのために祈ってください。

家庭生活の誉れ ▲わたしたちのために祈ってください。

独身者の守護者 ▲わたしたちのために祈ってください。

家族を支える柱 ▲わたしたちのために祈ってください。

嘆き悲しむ人の慰め ▲わたしたちのために祈ってください。

病める人の希望 ▲わたしたちのために祈ってください。

死に臨む人の保護者 ▲わたしたちのために祈ってください。

悪魔の恐れるかた ▲わたしたちのために祈ってください。

聖なる教会の保護者 ▲わたしたちのために祈ってください。

世の罪を取り除く神の小羊 ▲主よ、わたしたちをゆるしてください。

世の罪を取り除く神の小羊 ▲主よ、わたしたちの祈りを聞き入れてください。

世の罪を取り除く神の小羊 ▲いつくしみをわたしたちに。

神は、ヨセフをご自分の家のあるじとし、 ▲ご自分のすべてのものをおゆだねになりました。

祈りましょう。

神よ、あなたは計り知れない摂理によって、聖ヨセフを聖母の夫としてお選びになりました。この世において聖ヨセフを保護者と敬うわたしたちが、天においてその取り次ぎをいただくことができますように。あなたは世々に生き、治めておられます。アーメン。

2021年2月16日 日本カトリック司教協議会定例司教総会認可

 バチカンの典礼秘跡省はフランシスコ教皇様の認可を受けて、2021年の5月1日「労働者聖ヨゼフ」の記念日にあたり7つの追加の称号をこの「聖ヨゼフの連願」に付け加えました。それは、①Custos Redemptoris, ②Serve Christi, ③Minister salutis, ④Fulcimen in difficultatibus, ⑤Patrone exsulum, ⑥Patrone afflictorum, ⑦Patrone pauperum です。日本語訳は、司教団によっては確定はされていませんが、①贖罪主の保護者、②キリストのしもべ、③救いの奉仕者、④困難の中の支え、⑤亡命した人々の守護者、⑥苦しんでいる人々の保護者、⑦貧しい人々の守護者と訳すことが出来ます。聖ヨゼフ年にあたり、この「聖ヨゼフの連願」も日々の祈りの中に加えてみてはいかがでしょうか。

 さて、今年の労働者聖ヨゼフの記念日は復活節第4土曜日に当たっていたので、ミサの福音個所はヨハネ福音書の14章7節から14節でした。

【ヨハネ福音書147節~14節】

そのとき、イエスは弟子たちに言われた。14・7「あなたがたがわたしを知っているなら、わたしの父をも知ることになる。今から、あなたがたは父を知る。いや、既に父を見ている。」8フィリポが「主よ、わたしたちに御父をお示しください。そうすれば満足できます」と言うと、9イエスは言われた。「フィリポ、こんなに長い間一緒にいるのに、わたしが分かっていないのか。わたしを見た者は、父を見たのだ。なぜ、『わたしたちに御父をお示しください』と言うのか。10わたしが父の内におり、父がわたしの内におられることを、信じないのか。わたしがあなたがたに言う言葉は、自分から話しているのではない。わたしの内におられる父が、その業を行っておられるのである。11わたしが父の内におり、父がわたしの内におられると、わたしが言うのを信じなさい。もしそれを信じないなら、業そのものによって信じなさい。12はっきり言っておく。わたしを信じる者は、わたしが行う業を行い、また、もっと大きな業を行うようになる。わたしが父のもとへ行くからである。13わたしの名によって願うことは、何でもかなえてあげよう。こうして、父は子によって栄光をお受けになる。14わたしの名によってわたしに何かを願うならば、わたしがかなえてあげよう。」

 ここでは、イエズス・キリストは「わたしがあなたがたに言う言葉は、自分から話しているのではない。わたしの内におられる父が、その業を行っておられるのである。」と仰せになっています。イエズス・キリストの「わざ」、つまり「行い」は天の御父がなさっている「行い」であるのだ、ということです。こうして、「行い」が信仰の証しであることがはっきりと示されています。一方で、イエズス・キリストは、「わたしが父の内におり、父がわたしの内におられると、わたしが言うのを信じなさい。もしそれを信じないなら、業そのものによって信じなさい。」と仰せになりました。こうして、「業そのもの」、つまり、イエズス・キリストの具体的な「行い」が信じる根拠だということが示されます。

 聖ヨゼフは、毎日の生活の中で養父として、聖母マリアの浄配として幼子イエズスの養育に心を込めて当たりました。相手への具体的なお世話を通して天の御父の「業」を行い、イエズス・キリストが成人するまで育て上げたのです。このように考えると、フランシスコ教皇様が聖ヨゼフの模範を「聖ヨゼフ年」にあたってすべてのカトリック信者に想い起すように勧めている意味がはっきりと浮かび上がってきます。

 イエズス・キリストはヨハネ福音書の中で「はっきり言っておく。わたしを信じる者は、わたしが行う業を行い、また、もっと大きな業を行うようになる。わたしが父のもとへ行くからである。わたしの名によって願うことは、何でもかなえてあげよう。」とも仰せになりました。「聖ヨゼフ年」にあたり、私たち一人一人がイエズス・キリストの行う業を行い、もっと大きな業を行うようになるとき、キリストの聖なるみ名によって願うことは何でもかなえていただけることが分かります。

 なお、労働者聖ヨゼフの記念日の固有の第1朗読の聖書箇所はコロサイの教会への手紙3章14節から15節、17節でした。

【コロサイの教会への手紙 314節~15節、17節】

これらすべてに加えて、愛を身に着けなさい。愛は、すべてを完成させるきずなです。また、キリストの平和があなたがたの心を支配するようにしなさい。この平和にあずからせるために、あなたがたは招かれて一つの体とされたのです。いつも感謝していなさい。そして、何を話すにせよ、行うにせよ、すべてを主イエスの名によって行い、イエスによって、父である神に感謝しなさい。

 聖ヨゼフの取次を願うことは、私たち一人一人が心から「キリストの平和」が私たちの心を支配するように願い、いつも感謝することが出来るようになることを願うことと同じなのだと言えます。この5月の私たち一人一人の歩みが、聖ヨゼフに倣って、どんなときにも「主の平和」を生きる日々となり、出会う人々への具体的な「愛の実践」であるキリストの業を行うものとなるとき、私たち一人一人の心の中には、「感謝」という言葉がいつも満ち溢れるようになることでしょう。

 皆様が恵みに満ちた5月を過ごすことが出来ますよう、心を込めて祈っています。

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